2017年6月21日水曜日

真に核兵器のない世界をつくるために

 本日は6月議会最終日でした。
私は5本提出された意見書の中で、日本共産党が提案者とならずに賛成する意見書について、日本共産党が提案していた意見書を取り下げてまで賛成の立場を取る理由について討論を行いました。
 核兵器廃絶のための意見書を国にあげることが求められる情勢ではありますが、日本共産党以外から提案された意見書はこの部分にはまったく触れていません。日本政府の態度と同じ立場では思いは伝わらないと、今行われている国連での交渉会議で奮闘されている世界のみなさんと連帯した意見書になればという思いがあることを訴えさせていただきました。
 以下、発言した内容を添付しますので、ぜひお読みください。


 議員発第9号「核兵器のない世界に向けた法的枠組み構築への取り組みを求める意見書」について、日本共産党を代表いたしまして賛成の立場から討論を行います。

 国連では今まさに核兵器禁止条約の交渉会議が行われています。

 3月に132ヶ国と世界の反核・平和NGOの代表が参加して行われた第1会期の議論を踏まえ、5月にホワイト議長から条約草案が示され、6月15日に始まった第2会期では、各国代表から草案を評価する発言とともに、最終日の7月7日までに条約の採択を実現させようと呼びかける積極的な意見が相次いで出されました。 

 会議の実現に向けて主導的役割を果たしてきたオーストラリアの代表は「新しい条約は、これまでの軍縮条約の構造を網羅するものとなっている。この会議場の外では、7月7日の会期末までに条約採択をという強い期待がある」と強調し、ブラジル代表は「草案はわれわれが第1会期で掲げた問題をよく反映したものになっている。今後3週間、議長と会議参加者とともに建設的な議論に関与する。この会議の最後に、核兵器を法的に禁止する条約が採択されるよう我々は協力を惜しまない」と決意を表明しました。アイルランド代表は「共通の目標に向け、善意、政治的な指導力、強い意志を持てば前進することができる」と述べ、キューバ代表は「この会議は自分たちの世代だけでなく、未来の世代も利益を受けるものを決める良い機会になっている」と指摘しました。南アフリカ代表は「我々の希望は、この新しい法的手段が、被爆者と広範な国際社会の長年の願いを実現する時代の始まりとなる」と期待を寄せました。タイの代表は「我々は計り知れない貢献をしてきた市民社会の役割を認識したい」と市民社会の貢献について言及しました。

 また、5月に日本人女性として初めて国連軍縮部門トップに就任した中満泉(なかみついずみ)軍縮担当上級代表は、会議の冒頭に発言し「勇敢でたゆみない被爆者の努力」が国際社会を導いてきたとして「みなさんの交渉の結果、将来への架け橋が築かれ、誰もがこの問題に関わりを持つことが不可欠で、そのような関わりが核兵器の全面廃絶の達成には不可欠だ」と述べました。

 そして平和首長会議会長でもある松井広島市長も会議の場で「被爆者は存命のうちに核兵器の禁止を見届けたいとの強い願いを持っています。私たちは先日発表された条約草案が、被爆者の苦しみや願いをきちんと受け止め、言及していることを心から歓迎します。将来、核兵器に依存する国々が加盟できるようにするための工夫が凝らされていることも私が会長を務める平和首長会議の主張と合致しています。この草案をもとに、新条約が核兵器に関する既存の法的規制をさらに強化・徹底する禁止条約となるよう、各国政府の皆さまが建設的でオープンな議論を重ねられ、今会期中に採択されることを切望しています。このために、条約締約国と幅広い市民社会の諸団体が協力して、核保有国やその同盟国に対して、核兵器の使用は人類全体の危機を招くだけで安全保障に何ら役立つものではないことを周知するとともに、新条約が実効性あるものとなるよういっそう努力をしていく必要がある」と発言しています。

 このような議論が行われた翌16日には、核兵器廃絶を求める「ヒバクシャ国際署名」が2963889人分、ホワイト議長と中満(なかみつ)軍縮担当上級代表に手渡されました。日本及び世界から寄せられた国際署名は核兵器のない世界を望む人々からの叫びです。署名を手渡す際に被爆者の和田まさこさんは「いい核兵器禁止条約草案を出してもらいました。私たちが長年歩んできた道を酌んだ心優しい案だと思います」と感謝の気持ちを伝えています。

 
 思い返せば核兵器のない世界に向けた取り組みは、アメリカが広島、長崎に人類初の原子爆弾を投下した翌年、1946年1月の第1回国連総会が第1号決議として「原子兵器その他の大量殺りく兵器の廃絶」を求めたところから始まっています。原爆投下後すぐに、核兵器は禁止すべきという世論がありながら、アメリカとソ連を中心とする軍事同盟が核兵器を戦略の柱とし、膨大な数の核兵器を保有していたことから、部分的な軍縮措置で合意したことはありましたが、現在まで核兵器そのものを禁止し、廃絶するには至っていません。
 世界には今だに15,000発もの核兵器がありますが、それでも南アフリカのように、世界有数のウラン産出国として核兵器開発を進め、89年の時点で6発の核弾頭を持っていながら、国内外からの批判を受けて自主的に核兵器を解体し、93年には廃絶を発表するという行動をとっている国もあります。

 
 こういった中、今、史上初めて核兵器そのものを禁止する条約の実現に向けた議論が交わされています。
 核兵器禁止条約草案は、前文で核兵器を二度と使わせないことを誓い、第1条では核兵器の開発、製造、保有、貯蔵、実験のすべてを禁止しようとしています。6条では国際人道法と人権に基づく被爆者の救済も約束しています。「ヒバクシャ」の文字が刻まれた国際条約はこれが初めてです。条約草案が、被爆者の苦しみの上に立っていること、草の根の市民運動の役割に言及していることは、被爆者の方々の「自分たちが生きているうちに核兵器をなくしたい」「二度と自分たちと同じ思いをさせたくない」「原爆で苦しむのは自分たちで最後にしたい」「あの惨状を二度と誰にも体験させたくない」という痛切な願いが原動力となっています。
 さらに16条で「条約を批准、受諾、承認、加盟した国が40カ国になれば、その90日後に条約は発効する」と定めていることから、条約が早期に成立する見通しが強まっています。

 こうした条約草案作成への前進をつくったのは市民社会と各国政府の共同であり、意見書にもふれられていますが、条約の大本にある核兵器の非人道性の問題を広く知らせる運動であらゆる人を巻き込むことが、真の核兵器廃絶には必要です。
 交渉会議に参加した市民の「議場は敬意が満ちていて、皆が同じゴールを共有していた」との感想にあるように、核兵器禁止・廃絶が、逆転し得ない世界の大勢に発展していることは明白です。


 このような中で交渉に参加しない日本政府への失望が広がっています。国連会議に参加する被爆者団体の方からは「核兵器の段階的廃絶とは、私たち被爆者が一人もいなくなる未来のことですか」とまで問われているのです。

 悲劇しかない武器をなくせば、殺りくのない、語り合いで解決する世界になります。まさに「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動」とは今、国連や国連周辺で起こっている行動を指すのだと思います。

 この条約草案は、日本が共同提案国を代表して提出した「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動」にあるように、無法な振舞いをする北朝鮮だけに核兵器放棄を求めるような狭い枠組みとは違い、「核兵器使用の人道的懸念が高まっている中で、核不拡散条約やおのおのの非核地帯条約などを妨げるものではなく、核保有国も含め全ての国に開かれた包括的で検証可能な条約案」となっています。そのため草案は、核保有国の将来的な条約参加に道を開いているのです。


 日本共産党は3月の第1会期において、日本政府が欠席する中、被爆者とともに交渉会議に参加し、日本国民を代表して核兵器廃絶と禁止条約の実現を訴えました。また昨年4月に被爆者のみなさんが呼びかけた「核兵器を禁止し廃絶する条約をすべての国が結ぶようヒバクシャ自身が呼びかけける国際署名」に賛同し、茨木でも積極的に取り組みを進めています。この立場から今議会には「核兵器禁止条約の実現へ向けた取り組みに関する意見書」を提案していました。しかし会派間協議の中、現時点で茨木市議会として合意できる事項が今回の意見書の内容であるというなら、現状から少しでも核兵器のない世界へと国に対して求める行為は大切だと考え、この意見書に賛成することといたしました。

 世界を見渡しますと、スペインのカタルーニャ自治州議会では8日、スペインを含む世界の全ての政府に対し、「核兵器禁止条約の国連会議に参加し積極的な役割を果たすこと」を求める決議を賛成多数で採択しています。この決議では、核兵器が「国際法で禁止されていない唯一の大量破壊兵器だ」とも指摘しています。ここまでの決議があげられなくても、被爆者のみなさんや草の根で頑張る市民の努力が報われる行動へと政府を向かわせるために、茨木市議会として意見書を採択することが重要な情勢であることは間違いありません。

 5月に行われた茨木市原爆被害者の会総会の会長挨拶では「国連での核兵器禁止条約締結に向けた検討会議に対して、米国からの要請を受けて日本は反対を表明しました。唯一の被爆国だからこそ、核兵器廃絶に向けて先頭に立つべきではないでしょうか。政府は自衛隊の駆け付け警護や共謀罪の法制化、教育勅語の許容など、憲法に定められた枠を超えて徐々に戦前回帰しているように感じられます。私たちは子供や孫たちに平和な世の中を引き継ぐ責任があります。それぞれの立場で悔いのない人生を送っていただくよう心からお祈りいたします」と述べられました。

 茨木から発信されているこの想いに応え、私たちのこの行動のめざすところが被爆者のみなさんの願っている「世界から核兵器をなくすこと」、自分たちと同じ被害にあう人を二度と作らないことにつながるよう期待して賛成討論といたします。